会社を訴えるのは最適?労働者が企業に負けないための対抗手段

「会社を訴えたい!」

残業の強要やハラスメントなど、理不尽なことを強いられ会社を訴えたいと思ったことはありませんか?

ブラック企業が問題となっている昨今、労働基準法を守らず長時間労働や残業の強要、ハラスメントなど理不尽なことを労働者に対して強要する会社は後を絶ちません。このような企業が多い中で働いていると、会社を訴えたいという気持ちが生じても致し方ないと言えるでしょう。

しかし訴えたあとの減給や評価への影響、解雇などの企業からの報復リスクが怖くて多くの方が気持ちを抑えていると思います。生活があり職を失うわけにはいかない労働者の足元をみて、悪質な人の使い方をするブラック企業に仕返しすることはできないのでしょうか?

今回は、会社を訴える手順と訴訟以外の対抗手段についてお伝えします。

会社を訴えるだけが仕返しの全てではない

「会社への仕返し」と言うと、会社に対して訴訟を起こし、慰謝料を請求するというイメージがありますが、会社への仕返しは何も訴えるだけではありません。

そもそも会社を訴えるといっても、訴えて認められる場合と訴えても認められない場合がある為、状況に応じて取るべき行動を変える必要があるのです。

以下では、訴えて認められるために必要なものと、訴えても認められにくい場合をお伝えしていますのでご自身の状況がどのような状況にあるのか判断の参考にしてください。

会社を訴えて認められるには

訴えて認められるには客観的に状況を判断できる証拠が必要

会社を訴える内容により詳細は異なりますが、共通していることは、どんな内容で訴えるにしても「客観的に状況を判断できる証拠」が必ず必要だということです。身体的または精神的なパワハラやセクハラ、未払い残業代、危険な作業、不当な減給や不当な解雇など、これらの場合訴えることはできますが、訴えて認められるには客観的に第三者が見て判断できる証拠を準備していることが前提ですので、訴える場合は準備が必要です。以下は状況別の必要証拠ですので参考にしてください。

未払い残業代・長時間労働 パワハラ・セクハラ 危険作業 暴言暴行等身体・精神的被害
・タイムカード

・業務日報

・会社メール

・FAXの送信記録

・シフト表

・給料明細

・交通機関の帰宅時間履歴

・業務内容・勤務時間の記録

・残業時間計測アプリ

・ICレコーダーによる音声記録

・スマホ録音機能での音声記録

・スマホ録画機能での動画記録

・パワハラ,セクハラ内容が記載されているメール等の記録

・パワハラ,セクハラの日時、状況の詳細メモ

・現場の写真

・スマホ録画機能での動画記録

・現場作業状況の詳細が記載されているメモ

・ICレコーダーによる音声記録

・スマホ録音機能での音声記録

・スマホ録画機能での動画記録

・暴言・暴行の詳細を記録したメモ

・医師の診断書

 

不当な理由での減給や解雇
理由 内容 証拠
業績悪化等による整理解雇 会社の業績悪化などの理由で解雇されたにも関わらず、解雇された直後に求人募集を行なっているなど ・会社の業績悪化の事実がないことを示す証拠

・解雇された直後の求人表

能力不足 能力が足りない等の理由で解雇された場合 ・自身の実績を証明できるもの
病気や怪我 病気や怪我が多いという理由で解雇された場合 ・働くことに問題がないことを証明する診断書
懲戒解雇 会社の秩序が損なわれた等の理由によって解雇された場合 ・懲戒理由証明書

 

会社を訴えても認められない場合とは

上記のような状況を詳しく記録した証拠がない場合は訴えたとしても認められないことがほとんどです。また、理不尽に感じ訴えたところで、会社側が必ずしも違法行為をしているとは限りません。少しわかりづらいので例を挙げて解説します。

長時間労働で認められない場合

労働問題の中でもメディア等で多く取り上げられている長時間労働ですが、ある条件を満たしていれば労働者に対して残業をしてもらうことが違法ではなくなります。

それはあらかじめ労働組合と使用者で書面による「時間外・休日労働に関する協定届」通称「36(サブロク)協定」を締結し労働基準監督署に届出ていること。労働基準法では基本的に、1日8時間週40時間以上の労働をさせることは禁止されていますが、この36協定をあらかじめ締結し労働基準監督署にて届出ていれば違法にはなりません。

 

正社員なのに減給されても認められない場合

正社員であるにも関わらず減給されたという問題も多く存在します。減給された側からすると不当な減給として理不尽に感じるかもしれませんが、このような場合も違法ではない場合があるのです。違法にならない場合はとは、社員がなんらかの悪事を故意に働いた場合、ペナルティとして最大10%の減給措置が施されるということが、あらかじめ就業規則に明記されている場合です。

労働基準法 第九十一条(制裁規定の制限)

就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

したがって一方的な減給や制限を超えての減給は違法となります。

前述例のように一見理不尽な問題に思えても当てはまらない場合もありますので注意して判断しましょう。

 

会社を訴える場合にすべき行動とは

前述の通り、証拠がそろっている場合は、訴えることができ状況によっては慰謝料や支払われていなかった残業代等の請求をすることができます。会社を訴えるというと難しく考えがちですが、基本的に会社を訴える際は労働基準監督署もしくは弁護士を利用することになるので精神的な苦痛を避けることができます。一連の手順さえわかれば難しくないので消極的にならず、まずは相談の一歩を踏み出しましょう。

労働基準監督署に相談した場合

労働に関する問題の相談先として労働基準監督署か労働問題を専門とする弁護士があげられます。特に相談する順番に決まりはないのですが、明確な証拠があるのでしたら、まずは労働基準監督署を利用してみましょう。労働基準監督署の利用は料金がかかりません。なおかつ匿名での申告も可能なので個人を特定されたくない場合はおすすめです。労働基準監督署に申告した場合、以下が基本的な流れとなります。

労働基準監督署に相談(申告)

まず、労働基準監督署にて状況を説明します。このときすでに客観的な証拠が揃っているのであれば定時し、証拠が揃っていなければ労働基準監督署が判断するために必要な証拠を支持されるので証拠集めを行いましょう。

 

②使用者への事情徴収

次に労働基準監督署から使用者にむけて事情聴取がおこなわれます。

※ここでの使用者とは労働者を使用するもの、つまり社長や事業経営者、部長や課長、主任など役職を問わずに含めますが、中小企業の場合、社長であることが殆どです。

 

③使用者と労働者双方の主張整理・確認

事情聴取を得たのち使用者と労働者双方の主張を整理し確認がおこなわれます。ここで法違反がなければ完結ですが、違反があった場合は悪点の改善を求められます。これを期限内に改善できれば完結しますが、期限内に改善しない・できない場合は送検され裁判となります。また、主張整理・確認の段階で使用者側に悪質性があった場合は、是正勧告なしに司法処分されることもあります。

 

弁護士に相談した場合

労働基準監督署に相談をして、労働基準監督署が会社に働きかけても解決しない場合があります。その際は労働問題を専門にしている弁護士(弁護士にはそれぞれ得意としている専門分野があります)に相談しましょう。労働基準監督署とは違い有料ですが、初期費用無料・完全成果報酬型の弁護士事務所もあるため相談で相談することも可能です。弁護士に依頼した場合は以下のような流れになります。

①弁護士に相談

まずは状況を弁護士に相談します。多くの方が「弁護士に相談すると高額なお金がかかるんじゃ…」と心配し相談を諦めますが、弁護士事務所には相談金や着手金が無料の事務所も多くありますので、そのような料金設定の弁護士事務所を探して問い合わせれば無料で今の状況に対する正しい対処行動がわかります。

 

②会社へ交渉

弁護士に相談し会社と戦うこととなっても、いきなり裁判になるわけではありません。通常最初は、弁護士が会社と労働者の間に入り交渉をします。この時点で話がまとまれば和解となり、まとまらなければ労働審判に持ち越されます。

 

③労働審判

労働審判とは、時間のかかる裁判よりも迅速かつ適正に労働問題の解決を図ることを目的とした制度です。会社が弁護士との交渉に応じなかった等の場合に、労働審判官1名、労働審判員2名で構成された労働審判にて申し立てを行います。話がまとまれば和解となりますが、まとまらなければ裁判となります。

 

④裁判

労働審判にて話がまとまらず異議申し立てとなった場合は、訴訟手続きに移行し裁判となります。話がまとまれば和解、まとまらなければ判決となります。

 

会社を訴える以外で対抗するには

前述でもお伝えしましたように会社に抵抗する手段は会社を訴えるだけではありません。弱い立場になりがちな労働者を守るための組織も存在しますので対抗の選択肢として参考にしてください。

会社を訴える以外の対抗手段

ユニオン(合同労働組合)に加盟する

ユニオン(合同労働組合)とは、所属する会社に関係なく合同で組織される労働組合のことです。そもそも労働組合とは、労働者団結のもと経営者と実質的対等な立場に立ち、労働者の労働環境を守るまたは改善するために組織される団体のことですが、労働労組合の数は全体的に減少傾向にあり主に大規模な企業にしか組織されていません。中小零細企業での組織率は3%以下と言われており、簡単に立ち上げることができるのですが経営者と対等な発言権は得られるものの交渉等のノウハウを一から作らなければいけないため知識や屈強な精神がないとあまり意味をなしません。

しかしユニオン(合同労働組合)に加盟し組合員となれば憲法・労働組合法に基づいた権利と、保護を受けることができ個別的な労働紛争を団体交渉の席を設けることが可能になります。

 

二次被害を避けるためにも、まずは身近な相談先へ

会社を訴えたり労働組合等を通して会社に意見を言うと、その後の評価への影響や解雇(二次被害)などが心配です。左遷や職を失うかもしれないという現実的なリスクと不満を天秤にかけて、結果的に我慢してしまうという方が多いのではないでしょうか。本来訴訟を起こしたことによる二次被害はあってはならないのですが、現実的に全くないわけではありません。

退職または転職前提で訴訟を起こすのでしたら二次被害は関係ないかもしれませんが、在籍し続けるならこのような二次被害のリスクはできるだけ避けたいものです。そのためにもいきなり外部に相談し訴訟を起こすのではなく一度会社の相談できる人間に話または交渉をしてみましょう。

多くの方が交渉する前から、「会社に話しても無駄だ」と諦めますが、意外とそうでないこともあります。状況によっては、それだけで事態が改善することもあるので、思い切った行動を起こす前に是非試みてください。

 

ライタープロフィール

EL-LAB編集部

金融、経営コンサル、人材紹介、WEBメディア業界出身者が集まり、キャリアチェンジ(起業マニュアル/転職マニュアル)、ワークライフ(仕事人生の悩み)、マネーライフ(お金と人生の悩み)というテーマを軸に、各々の専門分野に特化した有益で信頼性の高い情報を発信。