親族から借入をするには?知らずに損をしないための正式方法

いざ起業(創業)しようとする際に、資金調達の問題はつきものです。起業(創業)時の資金調達方法には色々ありますが、やはり親族からの借金はいつの時代でも鉄板(テッパン)です。しかしながら、この「親族からの借金」もやり方を間違えてしまうと想定外に損をしてしまうケースもあるため注意が必要です。

ここでは、起業(創業)にあたって親族から資金調達をする際のメリット・デメリットを整理し、そのリスクから将来問題が起きないための注意点、具体的な対策について解説します。

親族から資金援助してもらう際の方法とは

はじめに、起業(創業)資金を親族等から援助してもらう方法は大きく分けて3つあります。

A:経営者「個人」が、親族から「借入金」として資金調達する方法

B:経営者個人ではなく「会社(法人)」が、親族から「借入金」として資金調達する方法

C:「会社(法人)」が、親族から「出資金」として資金調達する方法

それぞれについて具体的なメリット、デメリットを整理してみましょう。

 

メリット

デメリット

A.    個人の借入金として調達 ・    会社設立前から簡単に調達が可能(面倒な手続不要)

・    自己資金の一部として外部(金融機関)からの資金調達の際に有利となる可能性

・    個人の贈与と見做される可能性あり(贈与税の負担を課されるリスク)

・    問題が発生した場合、家庭内の不和に繋がる可能性

 

B.会社の借入金として調達 ・    利息の支払額は全額会社の経費に計上可能

(利益の圧縮=節税効果)

・    会社の負債項目として計上されることから、外部からの資金調達(借入金)を行いにくくなる
C. 出資金(資本金)として調達 ・    借入金ではないため、法的返済義務は生じない ・    会社の持分を出資者が保有することとなり、経営に口を挟まれても文句は言えない

実際に親族から資金援助を受けるにあたっては、これらのメリット、デメリットをしっかりと理解した上で、どの方式によるかを決定する必要があります。なお、筆者が通常、自身のお客様にオススメしているのは、状況に応じてAかBによることが多いですが、今回は特にA(親族から個人で借金する場合)について詳しく解説します。

親族からの「借入金」が「贈与」になるリスク

起業(創業)資金に限りませんが、親族からの「借入金」は、時として「贈与」とみなされ、実際に贈与税まで支払わされてしまうリスクが存在します。

「借入金」は本来「贈与」ではないので、そもそも贈与税などかかるはずもないのですが、それではどのような場合に「借金」が「贈与」とされてしまう可能性があるのでしょうか?具体的な例をいくつかご紹介します。

契約書がない借入金の場合

親族間でのお金の貸し借りの場合、普段の生活費やお小遣いの感覚で、実際には借入金であったとしても、口約束によるお金の授受であることが多いのが実態です。この場合、本当にお金を貸し借りしているのか、贈与しているのかが実務上分かりにくいことから、結果として、金銭の貸借と判断できないため、「借入金」の全額=「贈与」とみなされてしまう可能性があります。

 

利子が無い借入金の場合

親族からの借入金については、仮に定期的な返済がなされていても、その借金が無利子(無利息)で行われている場合、利子相当分が贈与とみなされてしまう可能性があります。

通常、借入金をした場合は利息が発生するのが一般的ですが、通常の市場金利に比して、極端に低い金利や、無利子による借入れの場合、借入人は金利相当分を取得した(得をした)、と考えられ、その得をした額に対し贈与税が課せられるという考え方です。

但し、仮に利息分が贈与とみなされてしまった場合でも、年間110万円までは贈与の非課税枠がありますので、この金額以下であれば贈与税はかかりません。

 

返済期限のない借入金の場合

親族からの借入金が、定期的に返済せずに、「出世払い」「儲かった時に返済する」といった具合に、いつでも好きなときに返済できる、もしくは年によっては全く返済しなくても良いといった状態にある場合、いわゆる「ある時払いの催促なし」の状態である場合、借入金は全額贈与とみなされる可能性が高くなります。

 

実質返済不可能なほどの多額な借入金の場合

親族からの借入金が、ご自身又は事業からの想定利益だけでは返済が不可能なほど高額である場合、体裁は借入金の形になっていたとしてもその借入金自体が贈与を前提としたものとみなされる場合があります。

[ご参考]

これらの親族からの「借入金」については、相続税法、相続税基本通達にて規定されています。

[平成29年4月1日現在法令等](国税庁HPより抜粋)

(相法9、相基通9-10)

親と子、祖父母と孫など特殊の関係がある人相互間における金銭の貸借は、その貸借が、借入金の返済能力や返済状況などからみて真に金銭の貸借であると認められる場合には、借入金そのものは贈与にはなりません。

しかし、その借入金が無利子などの場合には利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります。

なお、実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合や「ある時払いの催促なし」又は「出世払い」というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます。

 

実際に親族からの「借入金」を行う際はどうすればいいのか

前章では、本来であれば「借入金」であるにもかかわらず、「贈与」とみなされて贈与税を課せられる可能性がある具体的な事例について紹介しました。それでは実際に「贈与」とされないためにはどうしたら良いのでしょうか?

一番のポイントは、第三者から見ても「借入金」であることが明らかな状態にしておく、ということです。具体的には次のとおりです。

①借入れの額を「返済可能な範囲」にしておく

②金銭の貸し借りに係る「証拠」を残しておく

③利子と元本の「返済の記録」を残しておく

以下、一つずつ見ていきましょう。

親族から借入をする際の具体的な対策

借入金額を決定しておく

前述したとおり、返済の見込みがたたない程多額の借金を親族からした場合、贈与とみなされる可能性があるため、自身の収入や起業(創業)時の事業計画の中から返済に充てられる現実的な金額の範囲で借入金額を決定することをオススメします。

具体的には、月々の売上や収益予測に基づき、その範囲での返済金額、更には借入期間を計算し、借入金額総額を決定するというのが最も分かりやすい方法です。

例えば、起業当初の毎月々の売上高を30万円と想定し、そのうち5万円までは借金の返済に廻せるとしましょう。その場合、年間12ヶ月、借入期間を5年間、とすると、300万円程度の借入金であれば無理のない現実的な範囲、ということになるでしょう。

(注)あくまでも一例であり、使用している数字や返済比率は絶対的なものではありません。

 

借入金に関する「証拠」を残しておく

第三者から見て、形式的に「借入金」であると認識されるためには、書面により、借入の事実を残しておくことが重要です。そのためには、「金銭消費貸借契約」または「借用書」を作成し、この中に、借入に関する各種条件を盛り込んでおく必要があります。

なお、「金銭消費貸借契約」は貸主、借主双方が署名・捺印の上保管、「借用書」は借主が作成し、署名・捺印したものを、貸主が単独で保管、するのが一般的です。これらの契約書、借用書に記載すべき事項は次のとおりです。

[金銭消費貸借契約、借用書に記載すべき事項)]

①契約書、借用書の作成日付(年・月・日)

②借主の氏名、住所、押印

③貸主の氏名、住所、押印(但し、「借用書」の場合は省略)

④借入する金額

⑤借入期間(貸付日、返済期日)、返済方法

⑥借入金利(および金利の計算方法)(、利息の額)

⑦支払いが遅れた場合の取り扱い

契約書作成にあたって特に決まった書式はありませんが、以上の項目は少なくとも記載しておくと良いでしょう。親族間なのに何もここまで・・・と思うかもしれませんが、これはあくまで損をしないため、と考え、形式はきちんと整えておくことをオススメします。

例)金銭消費貸借契約書の様式例

 

利子と元本の「返済の記録」(証拠)を残しておく

前述のとおり、返済の実績がない場合、その借入金は贈与と疑われる可能性があります。一方、きちんと元本の返済、利息の支払いを行っていたとしても、それらが現金手渡しで行われている場合、一切記録が残らず、返済の実績として残らないことから、実績とはみなしてもらえないことも少なくありません。

従って、返済を行う場合は、必ず金融機関にある「ご自身の口座」から、お金を貸してもらった「貸主(親族)の口座」あてに振り込むなど、記録が残る形で行うことが望ましいでしょう。なお、万が一振込先の口座(親族の口座)の実質的管理者※1が「あなた」(借入者)である場合、こちらも贈与とみなされるため注意が必要です。

なお、貸付条件の中に「利息(金利)が無い」場合、先に記載したとおり利息(金利)相当分が贈与として扱われる可能性もあるため、出来るだけ利息(金利)の設定は行った方が良いでしょう。金利の水準は、一般の金融機関における資金の利用目的別金利を参考に、親族間のため多少優遇金利でも問題はありませんが、あらかじめ決めておくことが重要です。

※1 口座の実質的管理者

形式的には家族名義の預金口座であるにも関わらず、実質的にはそれ以外の者が当該口座を管理している場合、その者を口座の真の所有者(実質的管理者)といいます。名義が誰であっても、預金通帳、銀行届出印、キャッシュカードと暗証番号、など、実質的に口座の資金を自由に移動できる立場にある者は当該口座の実質的管理者とみなされます。親族等に名義を借りているのに過ぎない預金口座ということから、このような口座は一般的に「名義預金」と呼ばれます。

 

親族から借入を行うと何がいいのか

これまで、親族からの起業(操業)資金の「借入」時におけるリスクと対策を中心にお話してきましたが、この親族からの「借入金」については相当なメリットも存在します。

親族から借入をする際のメリット

資金調達までのスピードが速い、手続きも容易

当たり前ですが、金融機関等から借入(融資)を行う場合、担保や連帯保証人を要求されたり、申込みにあたって複雑な書類による申請等が必要になります。更に、何段階もの審査が行われることからどんなに早くても融資が承認され実行されるまでに最低数週間はかかるのが一般的でしょう。

一方、親族からの借入金であれば、担保や保証人を要求されることは殆どないでしょうし、実際に資金を出してくれることになれば、そのスピードも金融機関とは比較にならないほど、機動的で使い勝手が良いはずです。もちろん、上述したとおり、契約書などの書類は事前に作成し、証拠を残しておく必要はありますので留意が必要です。

 

(金融機関)からの資金調達の際に有利になる可能性

通常、外部機関(金融機関等)から起業(創業)融資を受ける場合、「自己資金」の有無は非常に重要です。

通常の金融機関の融資のみならず、起業(創業)融資に積極的な、日本政策金融公庫の新創業融資制度や各地方自治体による制度融資のケースであっても、「自己資金」の○%までしか融資は行わない、といった規定が設けられている場合も少なくありません。

実はこの「自己資金」には、親族からの借入金も認められる場合があるのです。これは金融機関ごとに考え方も異なり、自己資金のうち家族からの借入が100%ではNG、半分までならOK、といった具合に、一概にはどれが正しいということは言えません。

しかしながら、少しでも多くの融資を受けたい場合、親族からお金を借りておいた方が融資を受けられる可能性が高くなりますので、このことは知っておいて損はないでしょう。

 

借入元が親族でも正式な方法を

以上、起業(創業)時の必要資金を親族から借入れる場合のメリット・デメリットおよびリスクと対策についてご紹介しました。

親族からの「借金」は簡単に考えられがちではありますが、手順を間違えてしまうと大きな損失(贈与税の支払い)につながりかねません。(例えば、1000万円の贈与に対し、200万円程度の贈与税が発生します)

また、親族間であるからこそ、何かトラブルになった場合に事務的に処理が出来ず、通常よりも問題が大きくなりかねない、ということが意外に少なくないのも事実です。

後になって後悔しないためにも、想定されるリスクについて良く理解し、正しく対策を行って頂ければと思います。

 

ライタープロフィール

EL-LAB編集部

金融、経営コンサル、人材紹介、WEBメディア業界出身者が集まり、キャリアチェンジ(起業マニュアル/転職マニュアル)、ワークライフ(仕事人生の悩み)、マネーライフ(お金と人生の悩み)というテーマを軸に、各々の専門分野に特化した有益で信頼性の高い情報を発信。