管理職は残業代なし?残業代の真実と未払い分を取り戻す方法

「管理職は残業代なしなの?」管理職は役職手当があるから残業代は出ない会社から言われている方は多いと思いますが本当でしょうか?

日本企業では「管理職=残業代なし」という事実が強く根付いています。そのため、役職手当を含めた残業代が出ない管理職者の給料よりも、残業代が出る非管理職者の給料が上回るという自体もおきており、「名ばかり管理職」と納得できない管理職者が増えているのが日本社会の現状です。

しかし日本企業に深く根付いている「管理職者は残業代がでない」という常識は間違いで、管理職者であっても会社には労働に対する正当な対価を支払う義務があるためきちんと残業代を支払わなければなりません。場合によっては違法にあたることもあるため管理職の残業代について改めて正しい理解をしておきましょう。

本記事では、本記事では管理職でも残業代を受け取れる理由と現状を変え残業代を手に入れる方法を解説します。

管理職は残業代がでない?場合によっては違法の可能性も

日本企業全体と言っても過言ではないくらい「管理職=残業代なし」というイメージは深く根付いています。しかしこれは大きな間違いであり、企業側は管理職者であっても一般社員であっても関係なく労働に対しての対価である残業代を支払わなければならないのです。

そもそも残業代を支払う支払わない以前に、会社が社員に残業をさせるに当たってある手続きをしなければならないのはご存知でしょうか?

社員に残業をさせるには「36協定」を結ぶ必要がある

36(サブロク)協定という名前はなんとなく聞いたことがあるのではないでしょうか。しかし「名前は聞いたことがあるが詳しくは知らない」という方が多いのが現状。36協定とは、会社が社員に時間外労働、つまり残業をさせる際にあらかじめ締結し労働基準監督署に書面で届け出ていなければ、社員に残業をさせてはならないというものです。前述しました届出書とは「時間外・休日労働に関する協定届」のことを指し、これを定めた労働基準法第36条に基づき36協定と呼ばれています。

より詳しく解説しますと、36協定では1日8時間、1週間に40時間を超えて労働させる場合、または休日に労働させる場合は、あらかじめ労働組合と書面にて協定を締結しなければいけないという規定がされており、会社が社員に対して法廷労働時間(1日8時間,週40時間)以上の労働をさせる場合は「時間外・休日労働に関する協定届」を労働基準監督署に提出しなければならず、さらに残業代が支払われていなければ違法になります。

36協定について名前はなんとなく知れ渡っているのですが、前述した内容まで理解している人は少ないため、「管理職は役職手当があるから残業代は出ない」と会社にいわれ納得してしまい、そのような方が多数を占めているため日本社会の常識として深く根付いてしまったと言えるでしょう。実際に2017年6月に日本労働組合総連合会が実施した『36協定に関する調査2017』の結果では4割弱が「締結しているかどうかわからない」や4割以上が「会社が残業を命じるには36協定を締結しなければならない」という事実すら知らなかったと労働者は答えています。

[出典:日本労働組合総連合会『36協定に関する調査2017』]

 

管理監督者である場合は残業代を支払わなくていい場合も

管理職ではなく「管理監督者」であれば、会社側は残業代を支払わなくてもいい場合があります。労働基準法第41条には「※管理監督者には残業代などの時間外労働により発生する賃金は適用されない」と規定されており管理監督者、つまり監督若しくは管理の地位にある者であった場合は残業代を支払わなくても会社は違法にならないのです。

残業代を支払わなくてもいい管理監督者とは役員・幹部クラスのこと

前項での「管理監督者」が少しわかりづらいので、もう少し深堀してみます。残業代を支払わなくてもいい「管理監督者」に社員を当てはめるには一定の要件を満たしている必要があり、それは細かく定められているため、要件を満たしていなければ「名ばかり管理職」と言うことができるでしょう。管理監督者に該当するのは以下のような働き方をしている人を指します。

経営者と一体的な立場である

管理監督者自体は肩書きではないため、「取締役=管理監督者」「執行役員=管理監督者」というわけではありません。管理監督者とみなすための要件の一つとして「経営者と同じ立場で仕事をする」必要があるとされており、その要件を満たすためにも経営会議に参加でき発言権があるなどの企業経営に関与する必要があるのです。したがってそれらの経営に関与する権限が与えられていないのであれば管理監督者とは言えません。

労働時間の管理を受けずに好きな時間に出勤し、好きな時間に退勤できる

管理監督者が経営者と同じ立場で仕事をするには、時間的な厳しい拘束があっては支障がでます。そのため、会社から労働時間の管理を受けずに好きな時間に出勤し、好きな時間に退勤できる、つまり自分の裁量で業務量や時間をコントロールできる権限が管理監督者にはあるのです。したがって管理職であっても決められた時間に出社しなければならないという場合は、管理監督者とみなされません。

一般社員よりも賃金面で相当な優遇措置が取られている

企業の経営に関与するのであれば、一般社員よりも賃金面で優遇されなければなりません。金額の明確な基準は決められていませんが、役職手当数万円程度で管理監督者とすることはできず、役職手当を支払っているからといって残業代を支払わないことは認められないのです。仮に管理監督者であっても健康に害を及ぼすほどの長時間労働をさえることはできません。

具体的に管理監督者の範囲が決められている場合もあります。以下は金融機関、多店舗展開する小売業・飲食業等の管理監督者の範疇具体例です。参考までに目を通してください。

[出典:東京都労働局『しっかりマスター労働基準法 管理監督者編』]

 

どうして企業は管理職に残業代を支払わないのか

場合によっては違法となる可能性があるにもかかわらず、どうして企業は管理職に対して残業代を支払わないのでしょうか。企業が管理職者に対して残業代を支払わないには以下のようないくつかの理由があるようです。

企業が管理職者に残業代を支払わない理由

人件費の削減

残業代は企業にとって非常に大きな人件費となり、場合によって利益に直結しづらいことから、企業の意見としてできるだけ払いたくないというのがホンネです。そもそも残業という言葉には2種類あり社員の残業が長引けば長引くほど割増賃金として通常よりも多くの賃金を残業代として支払わなければならないため、社員の残業が多くなればなるほど払いたくありません。以下2つの残業について見ていきましょう。

法定時間外労働

法定時間外労働とは、法定労働時間を超えた時間に労働をすること、つまり労働基準法で定められている原則1日8時間、1週間で40時間を超えた残業のことを指します。法定時間外労働の場合は労働基準法上、割増賃金の支払いが義務付けられているため、会社は通常よりも多くの賃金を支払わなければなりません。

法内残業

法内残業とは、会社が就業規則や雇用契約書で定めた労働者の労働時間である所定労働時間を超え、労働基準法で定められている原則1日8時間、1週間で40時間内の残業のことを指します。法内残業の場合は、会社側は割増賃金を払う義務はありませんが、残業代は支払わなければなりません。

 

管理監督者と管理職を混同し認識している

前項のように会社側があえて狙って人件費削減のために残業代を支払わないこともありますが、狙っているわけではなく労働基準法に記されている「管理監督者」と「管理者」の言葉の意味を混同し認識しているということもあります。「管理監督者」という言葉自体の概念が明確に決められているようで不明確であり一般的な課長や部長などの管理職と混同して残業代を支払わないという会社も多いようで一概に人件費を削るために社員にウソをついているということは言えません。

 

残業代を払ってもえない場合は

法律上残業代を受け取る権利があるのであれば、会社側に残業代を払ってもらえるよう以下の行動をとりましょう。

残業代を支払ってもらえないときにとるべき行動

未払い残業代を請求する

未払いの残業代は過去に遡って請求することが可能です。しかし残業代の請求は過去2年までしか遡ることができないため、行動を起こすのであればできるだけ早く行動することをお勧めします。早めに対処をすれば、過去もらえなかった残業代を受けとることができ、これから先も受け取れるようになるため早ければ早いほど有利になります。注意しなければならないのは退職をした場合です。退職をしてから残業代を請求すると請求できる金額がどんどん目減りしてしまうので、在職していようが退職していようが早めに行動しましょう。

会社と直接交渉してみる

前述しましたように、会社側が狙って残業代を支払わなかったわけでなく、会社側が支払わなければならない事実を知らないというパターンも十分可能性としてあります。このような場合、会社側も法令遵守の意識があるのであれば、直接交渉し残業代を請求することも可能です。また、残業代未払いの会社には、「付加金」と「遅延損害金」というペナルティが課せられます。これらは結果的に通常の残業代よりもかなり高額な代金支払わなくてはいけないため残業代の未払いは会社にとって本来リスクが高いのです。企業側に悪気がなければ穏便に対処したいはずですので、これらも含め交渉してみてください。

ただし、残業代を支払われていなかった事実は変わりませんが、残業代を支払われていなからといっていきなり起訴するなどの行為は、自分にとってもリスクになるため、まずは直接交渉してみて様子をみましょう。

交渉でダメなら専門機関に相談

交渉でダメだった場合、または直接交渉しづらい場合は、外部専門機関に相談しサポートしてもらうことも可能です。相談先はいくつかありますが、まずは労働基準監督署に相談してみましょう。労働基準監督署への相談は無料で、費用は一切かかりません。ただしこの場合は、未払い残業があったという事実を第三者でも判断できるような証拠を提示することが必要になります。未払い残業代を請求するには、これだけの時間を働いたという証拠がなければ労働基準監督署もその他専門機関も対応の取りようがありません。

証拠となるものは幾つかありますが、できるだけ効力の高い証拠を残すことが大切です。タイムカードや出勤表、日報などの労働時間がわかり、支払われていた賃金が記載されている給与明細などは保存しておきましょう。もし会社の圧力によりタイムカードの打刻が困難であれば労働時間外に行ったメールの送受信記録や帰りの電車やタクシーなどの領収書も証拠になります。それ以外にも労働時間や状況を細かく記録した日記なども証拠として提示することができ、最近では残業時間を記録するスマホアプリもあり、未払い残業代の立証にも役に立った実績があるものも開発されましたので、可能な形で普段より記録を残して証拠として手元に保管しておきましょう。

労働基準監督署以外にも相談先は多く存在します。以下は社内で問題が発生した時などにサポートしてくれる専門機関ですので参考にしてください。

相談窓口 概要
総合労働相談コーナー

(各都道府県労働局または労働基準監督署内)

解雇、雇止め、配置転換、賃金引き下げ、いじめ、嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象とした相談窓口。
中央労働委員会 当事者間での労働問題解決が困難な場合に、各都道府県の労働委員会にて労働問題専門家によるトラブル解決サポートを受けられる。
法テラス 労働問題でのトラブル等の解決に役立つ法制度等の案内窓口。

 

転職する

前項のように未払い残業代請求のために外部専門機関に相談する場合は、解決をサポートしてくれるのは心強いですが自分一人だけの問題ではなくなるというデメリットがあります。専門機関から指導が入ったりもしますので事が大きくなってしまうのです。もし事を荒立てたくないのであれば、転職を視野にいれましょう。未払い残業代を含め、多くの労働問題は不透明な部分が非常に多いため解決までにそれなりの時間と労力を必要とします。そのため転職してしまったほうが早く現状改善できるということもあるのです。

また違法行為をしてまで残業代を支払わないいわゆるブラック企業は、この先長く経営を継続できないでしょう。社員に残業をさせなければ仕事が回らず、さらには残業代を十分に支払う能力もないギリギリで経営をしている企業は長持ちしません。早めに見切りをつけて将来性のあるホワイト企業に勤めた方が人生単位でみれば非常に有利なので、いち早く転職しましょう。全体的な比率でみればホワイト企業よりもブラック企業の割合の方が多いですが、それでも残業代をきちんと支払ってくれる企業はたくさんありますし、近年では増えていますのでより良い企業に勤めることをおすすめします。

 

残業代を支払わなくていいのは権力を持った経営陣

以上が、管理職の残業代についてでした。これまで解説しましたように、会社側が残業代を支払わなくていいのは、社内でも相当な権力を持った経営陣です。もし自分自身が管理職といえども、管理監督者の要件である①経営者と一体的な立場である、②労働時間の管理を受けずに好きな時間に出勤し、好きな時間に退勤できる、③一般社員よりも賃金面で相当な優遇措置が取られているに当てはまらず、数万円程度の役職手当をもらっているだけで残業代を支払われていないのでしたら、ご紹介しました対処方法を是非試してみてください。

 

ライタープロフィール

 EL-LAB編集部

金融、経営コンサル、人材紹介、WEBメディア業界出身者が集まり、キャリアチェンジ(起業マニュアル/転職マニュアル)、ワークライフ(仕事人生の悩み)、マネーライフ(お金と人生の悩み)というテーマを軸に、各々の専門分野に特化した有益で信頼性の高い情報を発信。